産業用ロボットの導入には関連する設備・システムを含めて多くの費用がかかることから、導入をためらっている中小企業も多いでしょう。しかし、ものづくり補助金などいくつかの支援を利用することで、スムーズに導入できる可能性があります。
この記事では、中小企業が産業用ロボットを導入する際に利用できる補助金の概要、導入事例、税制上の優遇措置などについて解説します。
産業用ロボット導入に利用できる補助金
産業用ロボットの導入には、次のような補助金が利用可能です。
個別に内容を見てみましょう。
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ものづくり補助金(第20次公募)
「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(通称:ものづくり補助金)」は、独立行政法人中小企業基盤整備機構が交付する補助金です。中小企業による生産性向上のために革新的な新製品・新サービス開発や、海外需要開拓を行うための設備投資を支援します。
以下、2つの補助対象事業枠が設けられています。
- 製品・サービス高付加価値化枠
- グローバル枠
補助金の概要や申請方法は、以下の表をご覧ください。
対象 | 日本国内に本社を置く中小企業・小規模事業者 |
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補助の上限額 |
製品・サービス高付加価値化枠 ・従業員数5人以下:750万円 ・6人以上20人以下:1,000万円 ・21人以上50人以下:1,500万円 ・51人以上:2,500万円 |
グローバル枠:3,000万円 | |
補助率 | ・中小企業等経営強化法で規定された中小企業は1/2 ・公募要領で定めた小規模企業・小規模事業者および再生事業者は2/3 |
対象事業 | ・革新的な新製品・新サービス開発の取り組み ・事業の海外展開 |
申請方法 | 電子申請システム |
申請期間 | 2025年7月1日~同年7月25日まで |
中小企業省力化投資補助金・一般型
中小企業省力化投資補助金は、独立行政法人中小企業基盤整備機構が交付する補助金です。
人手不足解消に効果のあるIoT・ロボットなどのデジタル技術を活用した設備の導入に際して、事業費等の経費の一部を補助します。
「一般型」と「カタログ注文型」の2つの申請・支援内容があります。
一般型は、個別の現場や事業内容に合わせた設備導入・システム構築などの、省力化投資を支援する規模の大きな補助金です。
補助金の概要や申請方法は、以下の表をご覧ください。
対象 | 中小企業者、小規模企業者・小規模事業者、特定事業者の一部、 特定非営利活動法人、社会福祉法人 |
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補助の上限額 | 従業員数5人以下:750万円(1,000万円)* 6人以上20人以下:1,500万円(2,000万円) 21人以上50人以下:3,000万円(4,000万円) 51人以上100人以下:5,000万円(6,500万円) 100人以上:8,000万円(1億円) * 賃上げ要件を達成した場合、補助上限が()内に引き上げ |
補助率 | ・中小企業は補助金額が1,500万円までは1/2(2/3)*、 1,500万円を超える部分は1/3 ・小規模企業者・小規模事業者、再生事業者は 補助金額が1,500万円までは2/3、1,500万円を超える部分は1/3 * 賃上げ要件を達成した場合、補助上限が()内に引き上げ |
対象事業 | 生産・業務プロセス、サービス提供方法の省力化 |
申請方法 | 電子申請システム |
申請期間 | 2025年8月上旬~同年8月下旬まで(予定) 年間で3~4回の公募を実施予定 |
中小企業省力化投資補助金・カタログ型
中小企業省力化投資補助金のカタログ注文型は、目的や対象企業は一般型と同様ですが、中小企業基盤整備機構が指定する個別の製品をカタログから選んで申請する方式をとっています。
補助金の対象となる設備の範囲が限定されており、一般型よりも補助金の上限額が大幅に抑えられています。具体的な設備に絞って補助を受けたい場合に利用するとよいでしょう。
補助金の概要や申請方法は、以下の表をご覧ください。
対象 | 人手不足の状態にある中小企業など |
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補助の上限額 | 従業員数5人以下:200万円(300万円)* 6人以上20人以下:500万円(750万円) 21人以上:1,000万円(1,500万円) * 賃上げ要件を達成した場合、補助上限が()内に引き上げ |
補助率 | 1/2以下 |
対象事業 | 既存事業の省力化を図る取り組み |
申請方法 | カタログから選んだ販売事業者に交付申請を依頼 |
申請期間 | 2026年9月末頃まで補助事業の申請を受け付ける予定 |
中小企業新事業進出補助金(第1回)
中小企業新事業進出補助金は2025年に新設された補助金制度で、独立行政法人中小企業基盤整備機構が交付します。
中小企業が新市場・高付加価値事業へ進出する際の設備投資を支援し、新規事業へのチャレンジを促進するための補助金です。既存事業の技術・ノウハウを活かして、新分野に挑戦する企業が対象となります。
補助金の概要や申請方法は、以下の表をご覧ください。
対象 | 企業の成長・拡大に向けた新規事業への挑戦を行う中小企業など |
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補助の上限額 | 従業員数20人以下:2,500万円(3,000万円)* 21人以上50人以下:4,000万円(5,000万円) 51人以上100人以下:5, .500万円(7,000万円) 101人以上:7,000万円(9,000万円) * 賃上げ要件を達成した場合、補助上限が()内に引き上げ |
補助率 | 1/2 |
対象事業 | 一定の条件を満たした事業計画に則った取り組み |
申請方法 | 電子申請システム |
申請期間 | 2025年6月中旬~同年7月10日(予定) |
小規模事業者持続化補助金<一般型・通常枠>(第17回)
小規模事業者持続化補助金は、独立行政法人中小企業基盤整備機構が交付する補助金です。
小規模事業者等の生産性向上と持続的発展を図ることを目的とし、販路開拓への取り組みに使用する経費の一部を補助する制度です。
経営計画書・補助事業計画書を作成して商工会議所に提示し、商工会議所が発行する事業支援計画書などの必要書類を事務局に提出して審査を受けます。
補助金の概要や申請方法は、以下の表をご覧ください。
対象 | 製造業その他:常時使用する従業員の数 20人以下 宿泊業・娯楽業:常時使用する従業員の数 20人以下 商業・サービス業(宿泊業・娯楽業除く):常時使用する従業員の数5人以下 |
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補助の上限額 | 50万円 |
補助率 | 2/3 |
対象事業 | 自ら作成した経営計画に基づく販路開拓などへの取り組み |
申請方法 | 電子申請システム |
申請期間 | 2025年6月3日~同年6月13日 |
中小企業成長加速化補助金(第1回)
中小企業成長加速化補助金は2025年に新設された補助金制度で、独立行政法人中小企業基盤整備機構が交付します。売上高100億円超への飛躍的成長を目指す中小企業による、大胆な設備投資を支援する制度です。
補助金の交付を希望する中小企業は、中小企業庁が推進する「100億宣言」の申請を行ってポータルサイトに掲載される必要があります。ポータルサイトに企業名が公表されるため、企業の認知度向上やブランディングにも役立てられるでしょう。
補助金の概要や申請方法は、以下の表をご覧ください。
対象 | 売上高100億円を目指す中小企業 |
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補助の上限額 | 5億円 |
補助率 | 1/2 |
対象事業 | ①「100億宣言」を行っていること ②投資額1億円以上(専門家経費・外注費を除く補助対象経費分) ③一定の賃上げ要件を満たす今後5年程度の事業計画の策定 |
申請方法 | 電子申請システム |
申請期間 | 2025年5月8日~同年6月9日(2次公募を実施予定) |
大規模成長投資補助金(4次公募が実施予定)
大規模成長投資補助金は中堅・中小企業が人手不足に対応し、成長するための大規模投資を支援するために経済産業省が設けた補助金制度です。
比較的規模の大きな中堅・中小企業は、地域を牽引する存在として期待されています。事業の拡大と生産性向上によって持続的な賃上げを可能にし、優秀な人材の確保につなげて地域の雇用を支えることが、この補助金の目的です。
補助金の上限は50億円で、10億円以上の設備投資と賃上げを条件としています。
概要や申請方法は、以下の表をご覧ください。
対象 | 中堅・中小企業(常時使用する従業員数が2,000人以下の会社) |
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補助の上限額 | 3.3億~50億円まで |
補助率 | 1/3 |
対象事業 | ①投資額10億円以上 ②賃上げ要件 |
申請方法 | 電子申請システム |
申請期間 | 3次公募は2025年3月28日で締め切り。4次公募が実施予定 |
補助金で産業用ロボットを導入した事例
ここでは、補助金を活用して産業用ロボットを導入した事例を紹介します。
建築機械用油圧バルブや舶用ディーゼルエンジン機器を製造する企業において、ものづくり補助金を利用して協働ロボットの導入が行われました。
量産に必要な作業を夜間や休日に協働ロボットが担当することで、熟練者は難度の高い作業に集中できるとともに、若手の育成に時間を割くことが可能となりました。
また、ボトルネック工程に協働ロボットを導入することで、生産性が大きく改善しました。
産業用ロボット導入に利用できる税額控除
中小企業が生産性向上を目的として、産業用ロボットなどへの積極的な設備投資が行いやすいよう、以下で挙げる税額控除などの優遇措置が設けられています。
内容について、個別に解説します。
中小企業投資促進税制
中小企業投資促進税制とは、中小企業等の設備投資を促進する目的で設けられた税制です。
青色申告を提出する中小企業者が、指定期間である2027年3月31日までの間に機械装置を含む対象設備を取得または製作した場合、取得価額の30%の特別償却または7%の税額控除が認められます。
幅広い業種・設備を対象とした税制であり、機械装置やソフトウェアに関わる産業用ロボットの導入に活用可能です。
対象事業や措置の概要を、以下の表に示します。
対象 | ・中小企業(資本金額1億円以下の法人、農業協同組合・商店街振興組合などの組合) ・従業員数1,000人以下の個人事業主 |
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対象事業 | 1台160万円以上の機械および装置、70万円以上のソフトウェアなど |
措置内容 | 資本金3,000万円超の中小企業:30%の特別償却 資本金3,000万円以下の中小企業または個人事業主 :30%特別償却か7%の税額控除 |
固定資産税の特例
中小企業が設備投資を通じて労働生産性の向上を実現するための計画(先端設備等導入計画)を策定し、設備が導入される地域(市区町村)の「導入促進基本計画」に合致している場合に認められる固定資産税の特例です。適用期限は、2027年3月31日までです。
策定した計画で新規取得される償却資産にかかる固定資産税が、市区町村の判断で軽減されます。
対象事業や措置の概要を、以下の表に示します。
対象 | 先端設備等導入計画の認定を受けた中小事業者 |
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対象事業 | 1台160万円以上の機械装置、30万円以上の測定工具および検査工具など |
措置内容 | 雇用者給与等支給額が1.5%以上増加することを表明した場合: 課税標準を3年間1/2に軽減 雇用者給与等支給額が3.0%以上増加することを表明した場合: 課税標準を5年間1/4に軽減 |
補助金に関するよくある質問
ここでは、補助金の申請や受け取りについてのよくある質問と回答を紹介します。
申請に臨む前に、補助金についての基本的知識を把握しましょう。
補助金は返却しなければなりませんか?
補助金に融資の意味合いはなく、原則として返却の必要はありません。
補助金は、生産性向上や雇用の確保など、国や自治体の利益のために交付されるものであり、思い切って投資に活用できます。
ただし、以下のような場合には返還が求められることがあります。
- 申請内容に嘘があるなど、不正な方法で受給した
- 受給後に提出が必要な書類を提出しなかった
- 補助金を使って取得した資産を、申請と異なる目的で使用した
補助金の目的を正しく理解して、成果に結びつけることが重要です。
補助金がもらえるタイミングは?
補助金は後払いが基本で、事業の実施が条件です。実施後に必要書類を提出し、審査に通ってから支給されます。
補助金の採択が行われた段階で支給されるわけではないため、注意しましょう。
資金計画の際には支給タイミングを考慮する必要があります。設備投資の時点では資金の確保が必要です。
実施後の審査に通る条件についても、あらかじめ確認しておくとよいでしょう。
補助金の申請は自社だけでできる?
補助金の申請業務を、自社だけで完結することは可能です。
ただし、金額の大きな補助金の場合はとくに申請や準備に時間や労力を必要とするため、通常の業務を行いながら対応することは難しいでしょう。確認作業に手間取った結果、スケジュールどおりに進まずに機会を逃すおそれがあります。
社内の管理部門に申請のための一時的な組織を作ったり、外部の専門家にサポートを依頼するなどの対応が必要です。
社内に補助金申請の知識・経験を持つ人材が乏しい場合は、初期段階から行政書士や中小企業診断士などの専門家に相談することをおすすめします。
まとめ
中小企業が産業用ロボットを導入する際に活用できる補助金は、独立行政法人中小企業基盤整備機構が交付する補助金を中心に、いくつかの選択肢があります。企業の生産性向上や、雇用の拡大につながる設備投資を支援する目的で交付される補助金、および税額控除などの特別措置が利用可能です。
補助金は返却が不要で、設備投資の大きな助けになるでしょう。
ただし、原則として事業を実施した後に支給されるため、支給タイミングを考慮して資金計画を立てる必要があります。