これまで産業用ロボットは「決められたワーク」が「決められた位置」にないと扱うことが難しく、人間のような柔軟な作業は苦手とされてきました。そこでロボットの活用範囲を広げるため、開発や導入が進んでいるのが「ロボットビジョン」です。
この記事では、ロボットビジョンの概要や、3Dロボットビジョンを実現する技術、その活用事例を紹介します。
ロボットビジョン(マシンビジョン)とは?
ロボットビジョンは「マシンビジョン」ともよばれ、産業用ロボットと組み合わせて使用されるカメラシステムの総称です。ワークの位置や向きの検出、外観検査に使われており、人間でいう「目」の役割を担います。
例えば、ばら積みされたワークの整列工程や、ひとつひとつ形が異なる製品のピックアップでは、ロボットビジョンによるワーク認識が重要となります。また、ロボットビジョンで取得した情報を活用することで、作業中の不良品を除外することも可能です。
ロボットビジョンは主に、周辺の状況を画像や動画として取得する「センサ(カメラ)」と、その情報を処理する「画像処理システム」で構成されています。ロボットビジョンで取得・分析した情報に基づいてロボットを動かすことで、精度の高い作業が実現します。
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2Dビジョンと3Dビジョンの比較
ロボットビジョンは主に、「2Dビジョン」と「3Dビジョン」に分類できます。
2Dビジョンは縦横の情報のみを取得しており、3Dビジョンは奥行きの情報まで考慮した画像の取得・分析を行うことが可能です。
これまで、平面的なワークの形状確認や外観検査には、2Dビジョンが使用されていましたが、バラ積みされたワークのなかからワークをピックアップすることは困難でした。
3Dビジョンでは、奥行き(3D)の情報を取得することで、人間の目と同様に「ワークまでの距離」を正確に測定することができます。そのため、バラ積みされたワークのピックアップを、人間と同等の精度で実現することが可能となりました。
3Dのロボットビジョンを実現する技術
3Dのロボットビジョンを実現するためには、「3Dカメラ」と「ディープラーニング」などのAIを用いた画像認識技術が不可欠です。
3Dカメラ(3Dセンサ)
3Dビジョンで用いられる縦・横・奥行きの三次元情報は、3Dカメラによって取得されます。
3Dカメラの方式は、主に「ステレオ方式」と「ToF方式」があります。
ステレオ方式
ステレオ方式は、複数のカメラで撮影した画像を組み合わせることで、奥行きの情報を取得します。人間が「二つの眼」によって、立体的にものを捉えるのとおなじ考え方です。
カメラからワークまでの距離は、カメラどうしの距離、カメラの焦点距離、視差(左右のカメラによる見える方向の違い)によって算出されます。これにより、人間の目と同等以上の情報を取得できるため、安定した作業が可能です。
一方で、ステレオ方式で正確に奥行きの情報を取得するためには、校正作業が不可欠です。校正はカメラ位置を変更しながら行うため、製造ラインに組み込まれた状態では、校正が難しい場合もあります。
ToF方式
ToFは、光の飛行時間(Time of Flight)から距離、奥行きを算出する方式です。
ToF方式のカメラは、光源とセットになっており、光源から照射した光が物体に反射しカメラに戻ってくるまでの時間をもとに距離を算出しています。光源には、パルス光が用いられる場合と、連続光が用いられる場合があります。
ToF方式は、撮影可能な距離が長く、低コストで導入できることから、物流分野のピッキングロボットなどに多く採用されています。
一方で太陽光があたる場所では、物体に反射した光を正確に検出できないため、屋外で使用する可能性がある場合には不向きです。
AIによる画像認識(ディープラーニング)
通常、「複雑な形状のワーク」や「不規則な位置のワーク」を扱うためには、時間をかけて学習を行う必要があります。その時間を大幅に短縮するのが、AI(ディープラーニング)です。
AIによる画像認識では、3Dカメラで撮影した複数のワークの画像を、ディープラーニングを用いたアルゴリズムに読み込ませることで、ワークの位置や向きを推定することができるようになります。
ディープラーニング
機械学習の手法の一つに、「深層学習」(ディープラーニング、DL)があり、近時のAIブームのきっかけとなった手法として特に注目されている。深層学習とは、多数の層から成るニューラルネットワークを用いて行う機械学習のことである。
ディープラーニングは「深層学習」ともよばれ、人間の脳神経回路をモデル化したニューラルネットワークを用いた機械学習手法です。従来の機械学習では、学習を行うために必要な情報を人間が与える必要がありましたが、ディープラーニングでは、情報をアルゴリズム自体が与えられたデータから抽出します。学習を自動で繰り返し行うことで、精度を高めていくことが可能です。
ディープラーニングは、画像認識を中心に音声認識や自然言語処理、設備の異常検知など、私たちの日常生活に近い内容も含め、幅広い領域で活用されています。
3Dロボットビジョンの活用事例
3Dのロボットビジョンが活用されている事例を紹介します。
複雑なワークのビンピッキング
複雑な形のワークは形状の特定が難しく、それらがバラ積みされている場合は、周辺のワークに影響を与えないようにピッキングをする必要があります。
このような作業を自動化するためには、これまで時間をかけてトレーニングを行う必要がありました。しかし、AIを搭載した3Dロボットビジョンを用いることで、大幅にトレーニング時間を短縮することが可能です。
変形文字を高速で認識し分類
ペットボトルなど、曲面に印字された文字は変形しており、通常の画像認識では精度を発揮することができませんでした。
3Dロボットビジョンを活用することで、高い精度で文字を高速認識できるようになり、複数のワークを同時に認識しながら、検査や分類を行うことが可能です。
混載された箱のデパレタイズ
異なる種類の箱が混載されているデパレタイズでは、箱の種類や位置・向きを正確に把握する必要があります。
3Dロボットビジョンを活用することで、奥行きの情報が把握できるため、箱の位置や大きさを推定し、適切なピッキングすることが可能です。作業の正確性と速度向上に大きく貢献します。
ロボットビジョンの選定は、ロボットSIer「アルフィス」にご相談ください
ロボットビジョンは、人間の「目」の役割を担う機能であり、人手不足を背景に、AI(ディープラーニング)を使った3Dロボットビジョンの活用が進んでいます。3Dビジョンを活用することで、従来は難しかったビンピッキングや検査、デパレタイズ作業の自動化が実現します。
ALFIS〈アルフィス〉では、多彩なロボットやビジョンを組み合わせた「バラ積みピッキングシステム」をはじめ、さまざまなロボットシステムをご提供しています。
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