
産業用装置を導入する際には、設置環境や安全対策、システムトラブルへの対応やオペレーターの確保など、注意すべきことが数多くあります。また、導入後に安全かつ生産性の高い運用をするために、改善を図る必要があるでしょう。
この記事では、産業用装置の導入・改善のために考慮すべきことを解説します。
産業用装置とは
産業用装置とは、特定の目的のために個別の機械・機器を組み合わせて稼働させるシステム、または個々の機器の総称です。類似した言葉に「産業用機械(産業機械)」「産業用機器(産業機器)」などがありますが、これらの用語は個別の機器のみを指すことが一般的です。
生産工程のなかではさまざまな機器が使用されていますが、それらを統合的に管理して安全性や生産性を向上させるためには、機器の最適な組み合わせやシステム化がポイントとなります。
産業用装置の種類
産業用装置の範疇に入るものは、多岐にわたります。
おおまかなくくりとして、以下の分類が可能です。
| 種類 | 機械 | 目的 |
|---|---|---|
| 工作機械 | NC旋盤、フライス盤、研削盤、切断機など | 金属や樹脂、石材などの硬い素材を加工するため。削る・穴をあける・成形するなどの加工を目的とする。 |
| 検査機器 | 外観検査、寸法検査、 X線検査装置 |
製品の品質検査を行うため。 カメラシステムなどを活用し、品質のチェックや不適合品の早期発見などで品質の安定を目指す。 |
| ロボット | 産業用ロボット、 協働ロボット |
主に従業員不足への対応に加え、単純作業や危険な作業の代替、アシスタントとして一緒に作業を行うことで、人の負担軽減を目指す。 |
| 分析装置 | 成分分析、精密測定器、計測器 | 物質に含まれる成分を調べるのに活用。 |
| 運搬機械 | クレーン、昇降機、 ベルトコンベア、 フォークリフト |
製品の品質検査を行うため。 工場や倉庫などの場所から他の場所へ移動させるための機械。 生産を効率的に行うために活用。 |
産業用装置を導入・設置する際の注意点
ここでは、産業用装置の導入・設置を行う際に注意すべき点をまとめます。
よい設置環境を準備することは、装置の安定的な運用に欠かせません。安全対策やシステムトラブルへの対応も、リスクマネジメントの観点で重要です。
設置環境の確認
産業用装置の設置環境は、十分な検討が事前に必要です。主に以下の点が、検討課題となります。
それぞれの項目について、解説します。
基礎や地盤の状態
装置を設置する基礎や地盤は、加工の精度を確保して安定稼働させるために極めて重要です。
地盤の状態を見極めるには、以下のポイントに着目します。
- 地耐力がある
- 水平である
- 凹凸がない
地耐力を確保するためには、地盤沈下のおそれのない頑丈な地盤を選びます。十分に頑丈であれば設置のための基礎工事は必要ありませんが、地盤が柔らかい場合や装置の特性上必要な場合は基礎工事が必要です。
コンクリートの厚さや化学物質による影響など、装置のメーカーが推奨する設置条件を満たす施工を実施しましょう。
稼働に適した温度・湿度
設置の前に、装置を稼働させるのに適した温度・湿度が保てるかを確認します。
一般的に高温多湿は、機器類にとって避けるべき環境です。さらに温度や湿度の変化が少ないことが求められます。機器の動作精度は温度や湿度の影響を受けるため、誤差を少なくするには環境の変化を最小限に留める必要があるでしょう。
また、空気中のほこりを巻き込むことによる故障や、生産物への影響、可燃性のガスに電気系統の火花が引火するなどの危険性がある場所で利用する場合は、装置側に防塵・防爆処理が必要です。
必要な電源
装置で必要とする電源を確保します。
機器ごとに異なる電圧・電流への考慮が必要であることはもちろん、電圧の変動も確認しましょう。電圧が安定しない電源には、定電圧装置を設置して安定化させます。
また、エアを使用する装置には、エア源が必要です。水分や不純物による不具合を避けるため、乾燥したきれいな圧縮エアを供給します。
さらに供給側だけでなく、装置からの排気や排水を適切に処理する手段の確保が必要です。
周囲の振動による影響
部品を加工する機械では、振動が加工物の寸法や表面状態に影響します。振動が発生する環境では、加工機や検査装置の使用は避けるべきです。
プレス機や鍛造機などは、大きな振動源です。トラックやフォークリフトなどの運搬車両が通る場所の近くも、振動の影響があります。重い荷物を運ぶベルトコンベアの周辺も、振動の有無を確認する必要があります。
生産ラインでの装置の配置を検討する際には、振動の影響を必ず考慮しましょう。
法律・省令に基づく安全対策
産業用装置の安全上、遵守すべき法律に「労働安全衛生法(安衛法)」があります。労働災害を防止し、労働者の安全と健康の確保が目的の法律です。
第四十条
前条第一項又は第二項の検査証(以下「検査証」という。)を受けていない特定機械等(第三十八条第三項の規定により部分の変更又は再使用に係る検査を受けなければならない特定機械等で、前条第三項の裏書を受けていないものを含む。)は、使用してはならない。
このほか、厚生労働省が定める省令として「労働安全衛生規則(安衛則)」が存在します。安衛則は、安衛法を実施するために必要な安全衛生管理体制、危険物・有害物に対する規制・安全衛生教育・就業制限などを定める規則です。安衛則には産業用ロボットに関する条文があり、ティーチングに関する規定のほか、運転中の危険防止や検査・点検に関する規定などが盛り込まれています。
第二十七条
事業者は、法別表第二に掲げる機械等及び令第十三条第三項各号に掲げる機械等については、法第四十二条の厚生労働大臣が定める規格又は安全装置を具備したものでなければ、使用してはならない。
なお、労働安全衛生法・労働安全衛生規則には上記以外にも機械に関する記述がありますので、利用の前には一度目を通しておきましょう。
故障・システムトラブルへの対応
産業用装置は機器単体の故障だけでなく、システムトラブルの可能性も考慮しなければなりません。たとえば、システムのバージョンアップや保守作業のミスで発生するトラブルがあります。対応策や手順、代替手段をあらかじめ決めておくことが必要です。
また、日常的に発生する「チョコ停」の原因を分析し、装置の改善に務めることも生産性の向上につながります。たとえば部品のピックに失敗する原因に画像センサーの不具合があった場合、センサーの交換・見直しによってチョコ停を減らせます。
運用にあたる技術者の確保
産業用装置を導入するにあたっては、運用にあたるオペレーターや保守担当などの技術者の確保が必要です。保守は機器メーカーのサービスに依頼する方法もありますが、日常的なメンテナンスは社内で対応するほうが生産性を上げられるでしょう。
ロボットの場合は、ティーチングやプログラミングへの対応ができる人材が必要です。導入にロボットSierを利用している場合はほぼすべての対応を任せられますが、基本的な対応は社内でも可能な人材を育成しておくことがおすすめです。
機械とソフトウェアの両方に通じる人材は限られるため、社内で独自に教育体制を作ることも検討の余地があります。
メンテナンス性の確認
装置の日常的なメンテナンスの内容は、以下のとおりです。
- 清掃:装置に付着した汚れの物理的・科学的除去
- 点検:目視や測定機を用いた動作チェック
- 調整:装置のパフォーマンスを維持する調整
- 整備:不具合の修正・修理・部品交換
産業用装置を導入する際に、これらのメンテナンス作業が容易にできるかを確認しておくと、生産性を損なわずに運用できるでしょう。
メンテナンス項目を可視化し、作業負荷の軽減方法を検討して標準化することが必要です。
サポート対応の確認
産業用装置のメーカーやシステムインテグレーター(SIer)などが、必要なサポートやアフターフォローを提供しているかを確認します。異なる機器を組み合わせたシステムで導入する場合、Sler によるサポートが中心となるでしょう。
個々の装置の寿命や更新時期、サポート期間などは導入前にデータを取得し、自社の運用上の問題がないかを確認します。また、災害に見舞われた際の安全確保や復旧対応について、どのようなサービスを用意しているかも確認するとよいでしょう。
コストパフォーマンスの想定
装置の導入に必要な費用と、結果として想定される利益とを比較することでコストパフォーマンスを評価します。
生産性向上が想定される場合は新たに得られる利益、人員削減を予定する場合は削減可能な人件費などが成果として計上可能です。
対するコストとしては、以下のような項目が挙げられます。
- 新規導入に関わる費用
- 耐用年数から算出した減価償却分
- オペレーターの人件費
- メンテナンス費用(保守費用・交換部品や消耗品の費用)
- 安全対策費用
これらを想定される利益と比較して、コストパフォーマンスを評価します。
産業用装置の安全上の改善点
ここでは、産業用装置を導入した後の運用時に実施する安全の取り組み、改善点について解説します。具体的には、人間による誤操作や機械の誤作動、および人間と機械の接触事故を防止する取り組みについてです。
誤操作の防止(プルーフルーフ)
フールプルーフ(fool proof)とは、いわゆる「ポカよけ」のことを指します。誤操作があったときでも危険な状態にならない、または誤操作自体ができないような設計をすることです。
たとえば扉を開いて可動部にアクセスできる構造の場合に、扉が閉まった状態でなければ機械のスイッチが入らないような設計はフールプルーフに相当します。うっかりスイッチに触れても機械が作動しないように、2つのボタンを同時に押せば動くようにする設計も同様です。
誤作動の防止(フェイルセーフ)
フェイルセーフ(fail safe)とは、なんらかの異常が発生した場合に装置が安全な状態に移行するように設計することです。
よくあるフェイルセーフには、危険な状態を検出するセンサーが故障している場合は機械を動かせないようにする設計があります。停電時、自動的にバックアップ電源から電力を供給させて、システム停止を避けることもフェイルセーフの考え方です。
接触事故の防止
機械への接触事故としては、以下のようなケースが想定されます。
- 挟まれる・巻き込まれる
- 感電する
- 化学物質に触れる
これらの事故が起きないように、以下のような対策を実施します。
- 手足や体が入り込むすきま、開口部を作らない
- 作業服や保護具、作業手順を整備する
- 非常停止ボタンやセンサーを配置する
- 電気設備の絶縁不良をなくす
- 化学物質の正しい取り扱いを徹底する
- 注意喚起や安全教育を行う
装置の構造・機能などのハード面、標準化や教育などのソフト面、両方の対策が求められます。
産業用装置の生産性の改善点
ここでは、産業用装置の生産性を向上させるための取り組みについて解説します。
装置やシステムの改善とともに工程・ワークフローの見直しを行い、装置の性能を最大限に活かす工夫が必要です。
ボトルネックの改善
生産性が上がらない原因の一つとして、ボトルネック工程の存在があります。ボトルネック工程とは他の工程と比べて時間がかかり、効率の悪化した工程です。ボトルネック工程が解消されない限り、全体の生産性は向上しません。
自動化の可能な工程であれば、早期にロボットを導入するなどの対応を行います。手作業が必要な工程については、作業者と管理者が協力して作業の見直しに取り組む必要があるでしょう。
見直した作業をマニュアル化して運用し、作業者による違いをなくせば生産の安定化につながります。
自動化・無人化
一部の作業を人間が行っているために生産性が上がらない問題や、作業者に負担を強いる問題があります。
ロボットの導入によって無人化をしたり、一部の作業を代替して作業者の負担を減らすことが可能です。協働ロボットであれば、従来の作業スペースにそのまま導入可能で、作業者との連携もできます。ロボットの利点は、長時間稼働が可能なことや、作業ミスの軽減、検査工程における精度の向上などです。
課題解決コラムでは、製造工程における課題と解決策の事例を紹介しています。ぜひご覧ください。
AIの導入
AIの導入によって、産業用装置のパフォーマンスを飛躍的に改善できる可能性があります。
IoTを活用して機器の動作を数値で記録し、モニタリングが可能です。得られたデータはインターネットを介して遠隔地のオフィスでも参照できるため、製造物の欠陥などの問題が発生した場合の原因究明を容易にします。
さらに過去のデータをAIに学習させ、今後発生する問題を未然に防ぐことも可能です。
また、画像認識にAIを導入し、従来は人間が目視判定していた作業を代替可能です。選別や検査の精度向上とともに、品質の安定化につなげられます。
導入事例
パン粉製造の大手メーカーである、フライスター株式会社様での導入事例をご紹介します。
パン粉の梱包工程で、袋や段ボールに印字された品名や日付のチェックを、画像検査により自動化。
箱詰め前に袋の印字をチェックし、箱詰め・封函後の段ボールの印字もチェックすることで、入れ間違いなどさまざまなトラブルを防止しています。
カメラセンサが撮像した文字の判定には、AI技術が活用されています。
これによって平らな面に書かれた文字だけではなく、袋に印字されて歪んで見える文字でも、
何が書かれているかを認識することができるのです。
詳細はこちら
まとめ
産業用装置の導入にあたっては、設置環境の選定・整備、安全対策・システムトラブルへの対応など、検討すべきことは数多くあります。
導入後も安全確保に努めるとともに、生産性を向上させる取り組みが必要です。
JRCはメーカーから始まり、各種の産業用装置を連携して活用するシステムインテグレーターとして、製造業の生産性向上に貢献しています。
生産ラインのさまざまな課題に対し、協働ロボットによる自動化を中心とした解決策をご提案します。
















